格助词「で」
1. 主体を表す格
「で」は、述語で表される事態に対処する組織としてとらえられた主体や、場所・方向としてとらえられた主体を表すことがある。
事態に対処する組織としてとらえられた主体とは、複数の構成員からなるグループや、団体・組織である。
単数の主体は、「で」では表すことができない。
複数の主体であっても、グループとしてまとまってその行動を行うのでなければ、「で」は用いられない。
一方、場所・方向としてとらえられた主体とは、人を表す名詞に「ところ」や「方」のような形式名詞を後続させたものが、「で」によって主体として表されたものである。
2. 場所を表す格
「で」は動きの場所を表す。動きの場所とは、動作を行うことを表す述語や出来事の発生を意味する述語に対して、その動作・出来事の成立する位置である。
「ある」が、出来事を表す名詞を主体にとって、出来事の発生をはらわすことがある。この場合の場所は「で」で表す。
例:3時からこの部屋で会議がある。
3. 起因、根拠を表す格
「で」は、起因を表す最も基本的な格助詞である。「で」の起因・根拠としての意味には、変化の原因、行動の理由、感情・感覚の起因、判断の根拠がある。
3.1変化の原因
変化の原因とは、ある変化を引き起こす事態である。次の例では、ある事態を表す名詞に「で」がついて、述語によって表される別の事態を引き起こすことを表す。
例:強い風で看板が倒れた。
変化の原因となる出来事を「~こと」によって表すこともある。
変化の原因を表す「で」は事柄的な意味を持つ名詞につく。
3.2行動の理由
ある事物が存在することによって、何等かの行動が起きるとされる場合、行動の理由であるその事物は「で」で表される。
この場合、述語は意志動詞であるが、意志性は弱く、過去形をとって、そうせざるを得なかったという事実を表すことが多い。また過去形でない場合でも意思を表すモダリティをとりにくいなど、無意志的事態に類似した制限をもつ。
3.3感情・感覚の起因
感情・感覚を表す述語に対して、「で」はその感情や感覚を引き起こす原因となった出来事を表す。
3.4判断の根拠
判断の根拠とは、思考活動において、判断のもとになる内容である。判断を表す述語とともに用いられた場合、「で」は判断の根拠を表す。
このような「で」は、「から」で言い換えられる場合もある。